ABOUT
PROFILE

一級建築士
藤山 信博(ふじやま のぶひろ)
- 1966
- 広島生まれ
- 1992
- 宇都宮大学大学院工学研究科建築工学専攻修士課程修了
- 1993
- 東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻黒川研究室
- 1993~99
- 穴吹デザイン専門学校専任講師
- 2000~
- 藤山建築デザイン事務所設立
- 2001~07
- 広島工業大学専門学校・非常勤講師
- 2002~
- 穴吹デザイン専門学校・非常勤講師
- 2003~
- 広島インテリア協議会・非常勤講師
- 2010~12
- 安田女子大学・非常勤講師
- 2014~
- 広島市立大学・非常勤講師
- ABOUT DESIGN
-
INTRODUCTION
このAbout Designは、現在穴吹デザイン専門学校において「空間論」の講義が主内容です。
建物やそのインテリアは個人の意思に関わらず、社会生活に於いて毎日接せざるをえないものです。朝起きれば自分の部屋、家を出れば地域の建物や街並みに触れています。それらは、無意識のうちに人々に色々な心理的影響を与え続けています。建物は、人々の生活や仕事を促しもすれば妨げもします。
例えば、ある病状の人が良い建物・インテリアの部屋では早く回復し、逆に悪い部屋では遅くなるという事例があります。
あなたは、家の中で長く滞在したい部屋と、あまり入室したくない部屋はないでしょうか。そこでは、勉強や家事、仕事がはかどるでしょうか。建物やインテリアがつくる空間は、人々の創造力を掻き立てる力があります。
よい建築、インテリアで過ごすかどうかは、一生の幸不幸を左右してしまう要因の1つといっても過言ではないでしょう。
建物をただ設計するだけではなく建築として、そしてインテリアとしてデザインすることが望まれます。 デザインが、いかに人々に無意識に安らぎや幸せを与えられるかが大切です。これこそ「建物」を「建築」へと昇華させることに繋がります。建築、インテリアと他の芸術との違い。
建築、インテリアは、絵画や彫刻といった芸術とは違う楽しみ方があります。静止の状態で楽しむ事が主になるそれらとは違い、動的に楽しむことが出来ます。外観の見た目も大切ですが、建築的体験の素晴らしさは、主に内部空間にあります。「低い」から「高い」、「狭い」から「広い」、「暗い」から「明るい」へ。空間から空間へ流れるように空間のコントラストを鑑賞することができるのです。つまり空間を感じさせることによって感動や安心を与えられるのです。建築、インテリアは楽しいものです。
そしていつでも人に対して無意識に心理的影響を与え続ける大切なものです。芸術ではなくとも芸術的美意識や創造力は大いに必要です。このAbout Designは、どちらかといえば専門家の人ではなくデザインに興味がある一般の人、 或いは、これから建築やインテリアの勉強をしたいと考える人達に向けています。専門家から見れば、当たり前の内容も含まれていることでしょう。また私個人の偏見があることも否めません。
しかし、本文によって少しでも「デザイン」に対して興味を持っていただけたなら、この上ない喜びであります。CONCEPT
建築・インテリアにかぎらず、デザインで大切な事はコンセプトです。まず最初に考えます。コンセプトとは、創り出そうとするデザインの”本質”を見極め、そこから”個性”を導き出します。”本質”は不変のものです。”個性”はデザイナーや考え方によって変化します。少し極端ではありますが、簡単な例をいくつか挙げていきましょう。
まずは車です。車の”本質”は快適な移動手段です。それではスポーツカーと1BOXカーでは、どちらが美しく快適でしょう。
人、つまり”個性”によって快適な移動は、異なります。どちらの車が美しいかコンセプトなしで語る事が出来ません。
Aさんは、より速く走るためのスタイリングと性能を求めています。Bさんは、家族のコミニュケーションのためのスタイリングと性能を求めています。Aさんにとって”個性”は、より速く走るための空体力学(車高が低く幅広の形態)やエンジン性能が優れたスポーツカーであり、Bさんにとっては家族とのコミュニケーションのための室内空間(車高が高く広々と感じる事)や燃費の良い1BOXカーです。
つまり、コンセプトに沿ってデザインされたものが美しいのです。
言い換えれば、”本質”が同じ車でも、コンセプトによって形態や性能が、変わってしまいます。
人より違ったものをデザインしたいからといって形態を最初に考えることは通常ありません。スタイリングのみを追求をした場合、”本質”を無視してしまう可能性があるからです。例えば、スポーツカーは、スタイリングが良くても遅いエンジンでは ”快適な移動”ができません。次は時計です。
時計の”本質”は、時刻を正確に刻み、見えやすいことです。
ここで、金無垢時計とクロノグラフ時計(ストップウォッチ機能付時計)は、どちらが美しいでしょう。金無垢時計は成金趣味で、あまり…と言う人もいるでしょう。クロノグラフ時計は、針がいっぱいあって落ち着きがないと言う人もいるでしょう。ならば”個性”を宝飾品と考えたらどうでしょう。時計という”本質”に宝飾品としての輝きを与えることです。
”本質”(時刻が正確で見えやすい)があるからこそ”個性”(宝飾品)が、より美しく見えます。
”本質”がなければ、いくら神々しいデザインでも決して美しくありません。
美しいものは、形態からデザインしているように見えても、実は、”本質”を外していないのです。ではクロノグラフ時計の美しさはどこにあるのでしょう。
時刻だけではなく、ストップウォッチ機能がつき、それを見えやすくするために秒針や分針が別に配され、時計外周には、それらを生かす目盛りがついています。
”個性”(ストップウォッチ機能機能)を、より見えやすくするために、「結果的」に導きだされたデザインです。この「結果的」が重要です。、
「結果的」に導き出されたデザインならば、 その形態はオーソドックスであろうと奇抜であろうと美しいと考えます。
コンセプトによって形態が導き出され、デザインが決定していきます。
金無垢時計とクロノグラフ時計。コンセプトが違えば、同じ時計でも」形態は変わります。それぞれのコンセプトに沿った美しさがあるのです。大切な事。それはデザインを考える時、本当に必要なコンセプトを導き出す事です。これは建築でも同様だと考えています。
建築の”本質”は体験だと考えています。どのような体験をさせたいのか。それを決めるコンセプトは通常、空間構成から考えていきます。
建築形態は、最初に考えるのではなく、空間構成より「結果的」に求められるのです。ABOUT DESIGN
どうデザインするかではなく、デザインによって何が生まれるのか。
デザインによって何を実現し、どういう体験をさせたいのか。これこそが最初に考えるコンセプトになります。
何かを生むデザインは「思い込みを捨ててみる」ことからはじめます。そしてそのデザインは、未来へ繋がる「持続性」を持つことが大切です。
環境、敷地のもつ力を引き出す事、方位、耐震、エコ、通風採光など様々な配慮が必要です。
しかしそれだけではでは持続性を持つことは難しいでしょう。そのためにはコンセプトに沿った仕掛けづくりのデザインが重要となります。
住宅の”本質”は「家族の暮らし方」だと考えています。デザインによって、”触合い”や”くつろぎ”という体験を生みたいと思います。普通、家族人数から数(部屋数)を導き出し、3LDKや4LDKとしています。
この考え方は、戦後、欧米から伝わりました。これは「思い込み」かもしれません。なぜなら、部屋数が、直接”触合い”や”くつろぎ”に繋がらないからです。もちろん何LDKが悪いわけではありません。部屋を分ける場合、孤立や分裂を促さないようにします。数や面積も重要ですが、それだけでは箱のデザインになってしまいます。住宅は、日々営みがあって、はじめて「住まい」になります。人の想いを無視した「箱」のデザインでは何も生まれないでしょう。
”触合い”や”くつろぎ”をつくる仕掛けづくりのデザインが重要になります。「思い込みを捨ててみる」ことから、それぞれの趣味や生活様式をふまえた暮らし方”個性”を実現できるデザインが見えてきます。家族によって”個性”は異なります。”結果的”にそれぞれの個性的な住宅になるでしょう。しかし、その家族だけの愛着が生まれる住宅です。この愛着は、ずっと暮らしていきたいという持続性に繋がります。店舗等の”本質”は、「人と商品とが繋がる」体験だと考えています。
それはクライアントの商品への想いを表現し、人を惹きつける仕掛けのデザインが必要になります。
クールな空間にしたいからメタル素材。自然を表現したいから木素材。これらは仕掛けを優先させれば、最後であり、最初ではありません。
例えば、パン屋をデザインするとします。パンをいかに美味しく見せ、手に取ってみたいと思わせる仕掛けのデザインが必要です。これを今までの「思い込み」で他店と同じように陳列の仕方を中心に内装をカッコよくデザインしたり、素材にこだわっても「食べたい」と思わせることはできないでしょう。それより、どんな時に「食べたい」のか、或いは「美味しそう」と感じるかを考えます。それは人によって異なります。それぞれに”個性”があるからです。
ある人が、木洩れ日の公園のベンチで食べたパンがなんとも美味しかったとします。柔らかな光が方向性をもって注がれ、キラキラ、フワフワ、「あぁ食べたい!」。そう思わせる暖かな木々の光を表現する空間デザインが大切になります。ここではじめて、それを強調する内装素材を考え、照明、空間構成を決めていきます。無理やり個性的なデザインをつくろうとしなくても”結果的”に他店との差別化ができます。その人だけの”個性”的な 人とパンとを結ぶデザインが生まれるのです。
クライアントの想いとその商品。それが人と繋がることで店舗の持続性になります。
デザインの考え方は多種多様です。真のデザインは、人を幸せにする力があるはずです。