どうデザインするかではなく、デザインによって何が生まれるのか。
デザインによって何を実現し、どういう体験をさせたいのか。
これこそが最初に考えるコンセプトになります。
何かを生むデザインは「思い込みを捨ててみる」ことからはじめます。
そしてそのデザインは、未来へ繋がる「持続性」を持つことが大切です。
環境、敷地のもつ力を引き出す事、方位、耐震、エコ、通風採光など様々な配慮が必要です。
しかしそれだけではでは持続性を持つことは難しいでしょう。
そのためにはコンセプトに沿った仕掛けづくりのデザインが重要となります。
住宅の”本質”は「家族の暮らし方」だと考えています。
デザインによって、”触合い”や”くつろぎ”という体験を生みたいと思います。
普通、家族人数から数(部屋数)を導き出し、3LDKや4LDKとしています。 この考え方は、戦後、欧米から伝わりました。
これは「思い込み」かもしれません。
なぜなら、部屋数が、直接”触合い”や”くつろぎ”に繋がらないからです。
もちろん何LDKが悪いわけではありません。
部屋を分ける場合、孤立や分裂を促さないようにします。 数や面積も重要ですが、それだけでは箱のデザインになってしまいます。
住宅は、日々営みがあって、はじめて「住まい」になります。
人の想いを無視した「箱」のデザインでは何も生まれないでしょう。
”触合い”や”くつろぎ”をつくる仕掛けづくりのデザインが重要になります。
「思い込みを捨ててみる」ことから、それぞれの趣味や生活様式をふまえた
暮らし方”個性”を実現できるデザインが見えてきます。
家族によって”個性”は異なります。”結果的”にそれぞれの個性的な住宅になるでしょう。
しかし、その家族だけの愛着が生まれる住宅です。
この愛着は、ずっと暮らしていきたいという持続性に繋がります。
店舗等の”本質”は、「人と商品とが繋がる」体験だと考えています。
それはクライアントの商品への想いを表現し、 人を惹きつける仕掛けのデザインが必要になります。
クールな空間にしたいからメタル素材。自然を表現したいから木素材。
これらは仕掛けを優先させれば、最後であり、最初ではありません。
例えば、パン屋をデザインするとします。
パンをいかに美味しく見せ、手に取ってみたいと思わせる仕掛けのデザインが必要です。
これを今までの「思い込み」で他店と同じように陳列の仕方を中心に
内装をカッコよくデザインしたり、素材にこだわっても「食べたい」と思わせることはできないでしょう。
それより、どんな時に「食べたい」のか、或いは「美味しそう」と感じるかを考えます。
それは人によって異なります。それぞれに”個性”があるからです。
ある人が、木洩れ日の公園のベンチで食べたパンがなんとも美味しかったとします。
柔らかな光が方向性をもって注がれ、キラキラ、フワフワ、「あぁ食べたい!」。
そう思わせる暖かな木々の光を表現する空間デザインが大切になります。
ここではじめて、それを強調する内装素材を考え、照明、空間構成を決めていきます。
無理やり個性的なデザインをつくろうとしなくても”結果的”に他店との差別化ができます。
その人だけの”個性”的な 人とパンとを結ぶデザインが生まれるのです。
クライアントの想いとその商品。それが人と繋がることで店舗の持続性になります。
デザインの考え方は多種多様です。真のデザインは、人を幸せにする力があるはずです。
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