コンセプトとは

建築・インテリアにかぎらず、デザインで大切な事はコンセプトです。
まず最初に考えます。

コンセプトとは、創り出そうとするデザインの”本質”を見極め、そこから”個性”を導き出します。
”本質”は不変のものです。”個性”はデザイナーや考え方によって変化します。

少し極端ではありますが、簡単な例をいくつか挙げていきましょう。

まずは車です。車の”本質”は快適な移動手段です。
それではスポーツカーと1BOXカーでは、どちらが美しく快適でしょう。
人、つまり”個性”によって快適な移動は、異なります。
どちらの車が美しいかコンセプトなしで語る事が出来ません。




Aさんは、より速く走るためのスタイリングと性能を求めています。
Bさんは、家族のコミニュケーションのためのスタイリングと性能を求めています。

Aさんにとって”個性”は、より速く走るための空体力学(車高が低く幅広の形態)やエンジン性能が優れたスポーツカーであり、
Bさんにとっては家族とのコミュニケーションのための室内空間(車高が高く広々と感じる事)や燃費の良い1BOXカーです。

つまり、コンセプトに沿ってデザインされたものが美しいのです。
言い換えれば、”本質”が同じ車でも、コンセプトによって形態や性能が、変わってしまいます。

人より違ったものをデザインしたいからといって形態を最初に考えることは通常ありません。
スタイリングのみを追求をした場合、”本質”を無視してしまう可能性があるからです。
例えば、スポーツカーは、スタイリングが良くても遅いエンジンでは ”快適な移動”ができません。

次は時計です。

時計の”本質”は、時刻を正確に刻み、見えやすいことです。
ここで、金無垢時計とクロノグラフ時計(ストップウォッチ機能付時計)は、どちらが美しいでしょう。



金無垢時計は成金趣味で、あまり・・・と言う人もいるでしょう。
クロノグラフ時計は、針がいっぱいあって落ち着きがないと言う人もいるでしょう。

ならば”個性”を宝飾品と考えたらどうでしょう。
時計という”本質”に宝飾品としての輝きを与えることです。
”本質”(時刻が正確で見えやすい)があるからこそ”個性”(宝飾品)が、より美しく見えます。

”本質”がなければ、いくら神々しいデザインでも決して美しくありません。
美しいものは、形態からデザインしているように見えても、実は、”本質”を外していないのです。

ではクロノグラフ時計の美しさはどこにあるのでしょう。
時刻だけではなく、ストップウォッチ機能がつき、それを見えやすくするために
秒針や分針が別に配され、時計外周には、それらを生かす目盛りがついています。
”個性”(ストップウォッチ機能)を、より見えやすくするために、「結果的」に導きだされたデザインです。
この「結果的」が重要です。、
「結果的」に導き出されたデザインならば、 その形態はオーソドックスであろうと奇抜であろうと美しいと考えます。

コンセプトによって形態が導き出され、デザインが決定していきます。

金無垢時計とクロノグラフ時計。コンセプトが違えば、同じ時計でも」形態は変わります。
それぞれのコンセプトに沿った美しさがあるのです。

大切な事。  それはデザインを考える時、本当に必要なコンセプトを導き出す事です。

これは建築でも同様だと考えています。

建築の”本質”は体験だと考えています。
どのような体験をさせたいのか。それを決めるコンセプトは通常、空間構成から考えていきます。
建築形態は、最初に考えるのではなく、空間構成より「結果的」に求められるのです。